三段になりたいあなたへ〜終、高段を見据えた三段合格法〜

 始まったばかりの三段合格法シリーズですが三回目の今回で早くも完結となります。シリーズ最初に申し上げたとおり三段になるために必要なのは能書きより何よりも熱意ですから必然語るべきことも少なくなってしまうのです。
 しかも今回お話する内容は三段になるため「だけ」ならば不要です。三段になるためのものではなく、いずれ高段になることも見据えてひとまずは三段を目指す、そうした勉強方法です。したがって三段になれれば満足という方や今はとにかく三段になれればそれでよいという方には役に立たないでしょう。近いうちに「高段の壁」シリーズを連載する予定ですがそのマエフリのような話になりますからそうしたおつもりで読んで頂きたく思います。



 では本論に入ります。まず三段クラスの碁を見ていて感じることがありましてそれは得意不得意の凸凹が非常に激しいということです。戦いの碁になると相手をねじ伏せるがじっくりしたヨセ合いではズルズルと負けてしまう人やその逆の人、知識が豊富で序盤の折衝でポイントをあげるが中盤の戦略を立てるのが下手な人など、とにかく色々な個性をもった打ち手が多い。要するにアマチュア中段クラスとは総合力をしっかりつけなくてもある分野だけを徹底的に強化してやればそれで到達できる存在でありだからこそ私が口を酸っぱくして言っている「大事なのは熱意だけだ!」につながるわけですし前回お話しした「自分の気になったものからやっていく」につながるわけです。

 しかしです。賢明な愛読者の皆様ならお気づきでしょうがこの凸凹こそがアマチュア中段の弱点であり高段になれない理由の1つなのです。解説するだけ野暮ですが得意不得意の差があまりに激しい場合安定した勝ち星をあげることはできないからです。



 したがって次のような結論になります。ひとまずは自分が気になる分野を集中的に勉強するということで構いませんが、同時になるべくムラを作らないよう意識して勉強をしなくてはならない、ということです。具体的には、定石の勉強に偏っているなと感じたらちょっと死活もやってみるとかそういうことで構わないでしょう。

 実は全範囲を勉強するのに一番分かりやすい方法は、すべての分野が詰め込まれているプロの碁を鑑賞することでこれが一番地力がつきます。私は二十歳近くでルールを覚えるというかなり遅いスタートで特に強い人に教わることもなく99%独学でした。そんな私が10年足らずでとりあえずアマチュア高段まで辿り着けた理由はなんだろうと考えてみますと、やはり土台になっているのは棋譜鑑賞だと思います。並べたり、棋譜を見て覚えたり、パソコンでざっと見通したりまあ色々やりました。これが全分野にわたるある種の「センス」を作ってくれた感じはします。
 ただ棋譜鑑賞は効果が出るのはかなり先の話でして、やはりとりあえず三段になりたいというならひとまずは不要かもしれません。この辺りはご自分で判断ください。



 さてもう1つ、高段になるためには非常に重要な考え方がありまして出来れば三段を目指す段階でその考え方を会得しやすい状態くらいは作りたいものです。そのためにはまず上で述べたようにムラを無くすこと。そのうえで「作戦の幅を広げるにはどうしたらいいか」を頭の片隅に置いてみてください。碁には相手がいますから自分の作戦とおりにはなかなかいかないもの。模様を張ろうと思ったけど相手が反発したから地に切り替える、こうした柔軟で広い視座に立って打たないと勝てませんし普段の勉強もその助けになるようしなくてはいけません。この辺りをどれだけ意識しているかによって高段への上達スピードが変わるでしょう。



 さて、以上でおしまいです。最後の方はやや抽象的な話もありましたが、とりあえずそんなもんかくらいに軽く構えてやってみてください。高段になるための勉強はまず三段になってからでも遅くはありませんしね。
 近いうちに高段の壁シリーズを始めます。そちらを読めば今回話した内容の意味がより具体的に分かりますので、高段を目指す中段の皆様だけでなくまだ初段になったばかりの方にもお読みいただければと思います。



 やはり、三段合格法はあまりしまらないですね。まあ元々が大して話すこともないですから当然なんですが、流石にこのまま終わるのも尻切れトンボな感じですから、最後にもう一度だけこの話をしてしめておきましょう。

 三段になるには熱意が全てです。これを読んでやる気になったならば明日からと言わずにすぐ勉強を始めてください。

 「明日からやる、って、明日っていつよ?」

 「明日って今さ!」