気まぐれ上達コラム〜棋書の多読・乱読〜
初段合格法シリーズでいくつかの棋書を紹介しましたが、それで基本的にアマチュア六段になるまで知識としては十分な量が網羅されています。強いて言えば最新型だけは別にフォローが必要ですが、これはどんな棋書を使っても同じですし、そもそもアマチュアが知るべき最新型はかなり限定されるので、心配には当たらないでしょう。
では、紹介した本だけ買えばいいですか?と訊かれますと、海原としては「それは人によりけり」としか答えようがありません。「だって知識的には十分なんでしょ?」と言われればそうなんですが、だから他の本は不要とまでは言い切れない。と言いますのも、本に書かれている知識をきちんと吸収できるかどうかは別の話だからです。
囲碁に限らないことですが、一冊の本を読んだだけではイマイチ分からなかった内容が、別の本を読むことでしっかりと理解できた、という経験は皆さんもあるでしょう。同じ知識を説明していても、その説明の方法、切り口が違うと、また異なった印象になります。複数の角度から見ることで、知識に対する理解が深まるわけです。だから、別に本を読むことも役に立つ、あるいは必要ということもあるでしょう。
もちろん、一冊の説明で十分、という人もいるでしょう。これはその人の能力や才能にもよりますが、それ以上に大きいのは、他のトレーニングをどれだけしているかです。たとえば、棋譜並べをたくさんやる人ならば、棋書は一冊でも十分すぎるでしょう。何局もの棋譜を並べることで、必要な知識に様々な角度から触れることができるからです。また、身近に教えてくれる指導者がいる人も、「指導者の言葉」が棋書と別の切り口での説明となり理解が深まりますから、棋書は一冊でいいかもしれない。しかしただ実戦を積むだけの人や、あるいは棋書を読むのが唯一の勉強の人の場合に、果たして一冊の本だけで足りるかと考えますと、なかなか難しい気がします。
そんなわけで、同じ知識を解説した本を二冊以上読むことも、人によっては有益・必須な勉強になる、と言えます。もちろん、ろくに中身を咀嚼しないであちこちの棋書に浮気していてはあまり効果は無いでしょう。しかし、「まず一冊を完璧にしてからだ!」と固く構える必要もありません。「とりあえずこの本は三回読んだし、内容を完璧に理解できたかは分からないけど、ちょっと飽きたから別の本を読んでみるか、復習がてら」と、気楽に考えるのが大事です。
もちろん一冊を完璧にやるのでも構いません。ようは人それぞれ、自分なりの工夫が大切です。