初段の壁をぶっ壊せ!〜終幕、海原のやることなすこと〜
なかなか好評だったこのシリーズも、とりあえず今回で完結させていただきます。既に初段合格の基礎的なノウハウは全て書きましたから、今回は番外編・応用編という位置付けで、僕こと海原の採ってきた勉強法や実戦での考え方をお伝えして、皆様のご参考にしていただく、という趣旨です。肩の力を抜いて、なるほどそんなやり方があるのか、という程度に受け取っていただければ十分かと思います。
まずは実戦で僕が考えているのは2つでして、
・碁盤を広く見る
・なるべく丁寧に読む
です。1つ目は形勢判断と関係する話ですが、要は碁はトータルで囲った土地が勝っていればいいわけで、ですから相手の模様に深く入っていって攻められる必要は必ずしもなくて、別のところで儲ければいいのです。逆に模様に侵入されても、必ず殺さなくてはいけないわけではなく、相手を小さく生かしながら別のところに新たに模様を作っていく、そんな発想が大事です。スランプの時には、特に意識的に碁盤全体で考えるようにしています。
読みについてはそのままで、とにかく最善を尽くします。時間と集中力との相談がありますから、一手一手に何十分もはかけられませんが、とにかく与えられた条件の中で最善を尽くします。
対局が終わったら、軽く検討をします。知識、読み、形勢判断のどれが特にまずかったか突き止め、特に気になる分野があれば重点的にトレーニングします。
知識は、繰り返すしかありません。読みは、手っ取り早いのが詰碁です。15〜20分でなんとか解ける問題をどんどん解きます。ただこの方法は、あらかた基本死活が頭に入ってから始めました。三段くらいからだったかな。級の方にはあまりおすすめしません。他の方法としては、棋譜並べならぬ「棋譜覚え」。棋譜を並べずに、目だけで見て記憶します。ある程度覚えたら、棋譜を見ずに記憶だけを頼りに碁盤にできるところまで並べてみます。これは頭の中の碁盤もクリアになりますし、プロの棋譜を覚えることで知識も形勢判断も自然に身に付くので、なかなかよいかもしれない。級の頃によくやった方法です。
形勢判断は、最も難しい分野なので、試行錯誤しかないのですが、プロの棋譜を参考にするのが王道でしょうか。複雑な戦いの碁だと難しいので、穏やかに打ち的確に判断して勝つような棋士の碁がいいでしょう。その意味では江戸時代の碁がいい。僕は本因坊秀和の碁を200局ほど並べましたが、彼は形勢判断の名手らしく、もしかしたらこれが役にたったかもしれません。
つらつらと書きましたが、大切なことは、どのような能力をどうやって鍛えるのかという視点です。漫然と詰碁を解いてもダメ。そしてなにより、楽しんでやれる方法を考えること、これが一番ではないでしょうか。
というわけでひとまず本シリーズもお仕舞いにします。ご愛読ありがとうございました。皆さんの上達を願っています。